百枚に一枚、刷り上がりを抜き取ります。
機械は止めません。流れているところから一枚だけ引き抜いて、光にかざす。見るのは三つです。色。文字のずれ。汚れ。機械が判定してくれるわけではないので、全部この目で見ます。
なぜ百枚おきなのか。見つかるのが遅れるほど、刷り直す枚数が増えるからです。千枚流してから気づけば、千枚が紙くずになります。
それでも、刷り直しになったことは何度もあります。
一度は色でした。数値の上では合っているのに、お客様が思っていた色と違う。正解があるわけではなく、納得していただけるかどうかで決まる仕事でした。
もう一度は、製本の工程で見つかりました。自分が見ていた範囲には、不良がなかったのです。刷ったあと、断裁して、綴じる。その段階で初めて分かるずれがありました。
自分の目で見える範囲は、思っていたより狭い。
朝八時に出社して、上がるのは二十一時から二十三時のあいだでした。通勤は片道一時間です。その中で、一日に三種類から五種類の仕事を回していました。丁寧に見る時間があったわけではありません。決めた間隔で、決めた三つを見る。それだけを守っていました。
今は営業をしています。刷り上がりを抜き取ることはありませんが、確認の仕方は変わっていません。自分の手を離れたところで何が起きるかまで、見にいく。
そう決めていても、抜けるときは抜けます。先日もお預かりした書類が見当たらなくなり、青くなって探しました。結局は自分の引き出しの中で、別の資料に紛れていただけでした。
百枚に一枚では、足りないこともあります。